樹の声を聞いたおかげで、気分は最悪だった。

私は鞄に携帯を放り込むと、その足でリビングに向かった。

冷蔵庫を確認して、適当に材料を取り出すと凛に軽く何か食べさせようと思って料理を作り始めた。

マカロニを茹でて適当な野菜を切ると、それを鍋で煮込んでミネストローネを作った。
多分、食欲はないだろうけど、スープくらいなら口にするだろう。

温まった鍋をかき混ぜながら、なぜ自分はこんな事をしているんだろうと疑問に思ったけれど、大きく溜め息を吐いて考えるのを止めた。

凛が弱ってる姿は見ていて気分の良いもんじゃない。


あの馬鹿なあの子なら、きっと弱った友人の為なら自分を犠牲にしてでも、助けるのが当たり前だろうけれど、私は自分を犠牲にするつもりは全くと言っていいほど無い。

だからだろうか、友人の為に料理をする自分自身に何故か無性にイライラが募る。

そんな私の心とは裏腹に、鍋からは食欲をそそる良い香りが漂い始めた。


私はスープ皿を取り出すと、それをよそって水と一緒にお盆にのせて部屋に向かった。


部屋の扉を開けると、ソファに座っていた凛の背中がビクリとした。
多分、まだ色々と神経質になっているんだろう。


「凛?大丈夫?……ご飯作ったよ。」


私はそう言って、凛の座るソファの向かいに置かれた猫足のガラステーブルに出来上がった料理を置いた。