「俺は樹(いつき)だ。」
男はそう言って、また私と視線を合わせた。
私は真っ直ぐにその視線を見つめ返した。
「じゃあ、樹さん。凛はどこ?」
「樹で良い。」
「……樹、凛はどこ?」
私が冷めた声でそう尋ねると、樹は古ぼけた民家を顎で示した。
私は車を降りて凛のところに向かおうと思ったけれど、樹は私の腕を掴んでそれを阻止した。
「まだ、返事を聞いてねぇよな?」
「何の話?」
「お前の事が気に入った。」
「だから?」
私はわざとすっとぼけてそう言った。
段々と距離を詰めてくる樹が不快で仕方ない。
「かなうが俺の女になるなら、凛は解放してやるよ。」
「……嫌だって言ったら?」
「だったら凛にもっと稼いで貰わないとな。中学生ってだけで、高く売れるからな。」
そう言った樹の言葉に、腸が煮えくり返りそうになった。
なんとなく予想はしていたけれど、やっぱり凛は身体を売っていたんだ。
いや、正確にはこの男にやらされていたんだろう。
地獄に落としてやる。
美しいものを汚す事が、どれだけ罪深いものであるのか教えてあげよう。
「分かった。」
私がそう言うと、樹は満足気に笑った。
「だけど、条件があるの。」

