叶う。 Chapter2




自分がコイツに何かされた訳じゃない。
だけれど私は自分より弱者を虐げる人間が大嫌いだ。

さっきまでは、楽しい修羅場を想像していたけれど、今は何だか凛が心配で仕方ない。

私はそんな自分の感情に少し戸惑った。
多分こんな風に腹が立つのは、幼い頃から虐げられてきたせいだろう。


「まぁ、そろそろ凛にも飽きてきたし、かなうが俺の女になるなら凛を解放してやろうか?」


私の心とは裏腹に、男はそう言って古ぼけた民家の空き地に車を停めた。
その場所は汚ならしく、過去の自分の生活を呼び覚ますには充分な場所だった。


「……悪いけど、貴方の事タイプじゃないの。」

「随分とはっきり言ってくれるじゃねぇか。」


男はそう言って車のハンドルを叩きながら、ゲラゲラと下品に笑う。
私は目を細めて男を一瞥すると、更に言葉を続けた。


「それに、レディに対して失礼だわ。普通は自分から名前を名乗るものでしょ?」


私はそう言って、優しく微笑んであげた。
男はそんな私に一瞬眉間に皺を寄せて威嚇しようか迷っていた様子だったけれど、結局笑い声をあげた。


「お前、面白いやつだなw」


男はそう言って私を値踏みするように、上から下までじっくりと観察した。