叶う。 Chapter2




「良かった。かなうが嫌って言うかと思った。」


「・・・どうして?」


「いや、何となく。今日元気ないから。」


和也はそう言って、私の手をぎゅっと握った。


「最近、寝不足なの。」


私は何も悟られたくなかったので、慌ててそう言った。


「そうなんだ。発表会終わったから少しは落ち着いたかと思ったんだけどな。」


「うん、何か変に興奮状態なのかも。」


「あー、それはあるかもね。俺も発表会とかコンテスト前後は何か落ち着かないから、気持ち分かるわ。」


和也はそう言って、いつもみたいに優しく笑った。
どうやら私の心は、まだ悟られてないみたいで安心した。

和也はとても人をよく観察出来る人だから、無駄なことで神経を使わせたくない。

そうじゃなくても、私は和也をきっと傷つける事になるのだから。
遅かれ早かれ、和也はきっとそれに気付くはずだ。


私がぼんやりそんな事を考えて居ると、直ぐに学校が見えてきた。


「じゃあ、また帰りにな。」


下駄箱で上履きに履き替えると、和也はそう言って私の髪を優しく撫でた。


「うん。」


私がそう言うと同時に愁とまさが丁度、下駄箱にやって来た。


「朝から見せ付けてくれんじゃん。」


まさがそう言ったけれど、和也はにこっとして「羨ましいだろ?」と、楽しそうに言った。
私は何だか恥ずかしかったので、和也より先に階段を上がってクラスに向かった。