「良かった。かなうが嫌って言うかと思った。」
「・・・どうして?」
「いや、何となく。今日元気ないから。」
和也はそう言って、私の手をぎゅっと握った。
「最近、寝不足なの。」
私は何も悟られたくなかったので、慌ててそう言った。
「そうなんだ。発表会終わったから少しは落ち着いたかと思ったんだけどな。」
「うん、何か変に興奮状態なのかも。」
「あー、それはあるかもね。俺も発表会とかコンテスト前後は何か落ち着かないから、気持ち分かるわ。」
和也はそう言って、いつもみたいに優しく笑った。
どうやら私の心は、まだ悟られてないみたいで安心した。
和也はとても人をよく観察出来る人だから、無駄なことで神経を使わせたくない。
そうじゃなくても、私は和也をきっと傷つける事になるのだから。
遅かれ早かれ、和也はきっとそれに気付くはずだ。
私がぼんやりそんな事を考えて居ると、直ぐに学校が見えてきた。
「じゃあ、また帰りにな。」
下駄箱で上履きに履き替えると、和也はそう言って私の髪を優しく撫でた。
「うん。」
私がそう言うと同時に愁とまさが丁度、下駄箱にやって来た。
「朝から見せ付けてくれんじゃん。」
まさがそう言ったけれど、和也はにこっとして「羨ましいだろ?」と、楽しそうに言った。
私は何だか恥ずかしかったので、和也より先に階段を上がってクラスに向かった。

