翌朝目が覚めると、外はまた曇り空だった。


昨日散々泣いたわりに、瞼は思った程重たくなかった。
人間、泣きすぎる限界を超えると何だか目がすっきりするような気がするのは、私の気のせいだろうか。


私は窓辺に置かれた椅子に座ってカーテンを開いて外の景色を眺めた。
だけれど外が寒いからか、窓ガラスは白く雲っていた。


私はその硝子に小さくハートを描いてみたけれど、直ぐに掌でそれを拭った。


学校に行くにはまだ早い時間に目を覚ましてしまったようで、空は薄暗かった。

庭に見える花が、何故かいつもより色褪せて見えるのは、きっと私の心のせいだろう。


私がそんな事を考えて居ると、ベッドの枕元に置かれた目覚まし時計が小さく鳴り始めた。


私は立ち上がってそれを止めると、ベッドに置かれたパーカーを羽織り部屋を出て行った。

いつもと同じ毎日が始まる。
だけれど私にはこれから毎日がいつもと違う毎日になるんだろうと思う。

それはシオンが居なくなってしまうまでのカウントダウンが、始まってしまうと思うからだった。


バスルームで顔を洗い鏡を覗き込むと、目は真っ赤だけれど腫れはやっぱりそこまで酷くなかった。

ただ目の下に出来た隈は真っ黒で、寝不足を通り越してやつれて見える。

だけれどメイクで何とかなりそうだったので、私は少しだけホッとした。


これ以上、誰かに心配されるのは正直言って嫌だった。