「それはお前を育てるのに、金がかかるからだ。親父はお前を引き取る事に大反対だったんだよ。本妻に女しか産まれなくて、そうじゃなくても女は金がかかるって考えるような人間だからな。」


「じゃあ、その為にシオンは取り引きを始めたの?」


「あぁ、15になったと同時にな。それがあの男との約束だったからな。金に汚い男なんだよ。世の中金が全てだというくらいにな。」


シオンの言葉に私は何も言えなくなった。


「だから俺は金を稼いだ。今考えれば親父は俺を試してたんだろう。俺はまんまと親父の策略に嵌められたって訳だ。」


「・・・・もし、私が・・・」


私がそう言うと、シオンは私の言葉を遮ってこう言った。


「もしお前が居なくても、俺はこうなってた。ならざるを得なかった。だからお前が気にする事じゃない。」


私はもう何を言っても無駄なんだろうと思った。

シオンはもう覚悟を決めている。
だからこんなに落ち着いているのだと、頭ではそう思っているのに何故だかとっても胸が苦しい。


そんなシオンに、私は掛ける言葉すら見つからないし、自分の気持ちすら整理出来ないでいる。

多分、シオンは私が混乱している事をちゃんと分かっている。
だから問い詰めたり、私の意見を聞きだそうとしてこないのだと思った。

いつものシオンなら、ああしろこうしろと命令口調で指示を出すのが当たり前なのに、それをしない今のシオンは完全に私が答えを出すまで待つ心構えなんだろうと思った。