賢くて、何でも出来るシオンが、そんなくだらない嘘なんて吐くはずないと心では思っていても、シオンの話は私にとって現実味が無い。
だから私は信じたくなかった。
だけれど現実は残酷だった。
私は実際知っているのだ、シオン達がしていた事を。
それに、昨日のシオンの行動や言動だけでも、全てそれが本当の事であると理解するには充分だった。
「大学を出るまではまだ自由とまではいかないが、家には入らない、だけど来年には向こうの学校に行く事になる。」
シオンは溜息混じりにそう言った。
「だから、いい加減泣き止んだらどうだ?」
シオンの言葉に、私は未だにグズグズと泣き続けている事に気がついた。
何だか昨日から泣きっぱなしな私は、きっと酷い顔になっているんだろう。
シオンはそんな私の涙を頬を撫でながら指先で拭った。
「だからそれまでは、アリス。傍に居てくれるか?」
私は少し戸惑いながらシオンを見つめた。
「お前は幸せになる権利がある。だから、お前が誰と付き合おうがお前の自由だ。だから、俺は身を引こうと思ってた。」
シオンはそう言うと、私を引き寄せてまた抱き締めた。
「だけど、やっぱり無理だ。こうしてお前の体温があると安心するんだよ。」
私はその言葉に、更に胸が痛くなった。
シオンが好きなのはアンナだけれど、もうシオンには時間があまりない。
しかもいつアンナが目覚めるか分からない。
ならば私は、アンナの代わりにシオンの傍でその心を支えてあげる事が出来るのだろうか?

