「・・・アリスだったか?いい名前だ。」
何も言わない私に、シオンは突然そう言った。
私は顔を上げてシオンの瞳をじっと見つめた。
その深い蒼い瞳はなぜかとても物悲しげで、私は少しだけ胸が苦しくなった。
「俺は間違ってた。俺だけがアイツを守ってやれるとずっと思ってた。だけど違ったんだな。お前がアイツを守ってた。」
シオンはそう言って深く溜息を吐いた。
「でも、アンナは・・・あなたのことが好きだったの。」
私は思わず、シオンにそう言った。
シオンが落ち着いて見えるのは、多分相当傷ついているからだと、直感的にそう思ったからだ。
私の言葉にシオンは自嘲気味に笑った。
「俺はアイツを守るどころか、傷つけてばかりだった。だからアイツは耐えられなくなったんだろ?」
シオンの言葉に、私は何て言ったら良いのか分からない。
だってシオンの言うとおりだからだ。
普通の女の子になりたいと願っていたアンナは、シオンとの関係にいつも傷ついていた。
表面的には何でもない風に装っていたけれど、知らず知らずのうちにあの子は傷ついていた。
だけれどそれをシオンに伝える事は、私には出来なかった。
本来はお互い愛情があったのに、兄妹になったことで全てのバランスが崩れてしまった。
だけれどそれは、シオンとの約束だった事をあの子は知らない。
私は目を閉じて、あの日の出来事を鮮明に思い出した。

