そんな私は良い子じゃない。

ママはそんな私の心に気が付いていないのか、相変わらず優しい笑みを浮かべて私の瞳をじっと見つめた。


「こんな事、アンナに言うべきじゃないかもしれないけど、ママはね、貴女やシオンやレオンが幸せになる事が一番の願いであって、ママの夢なのよ。だからね、必ず幸せになってね。」


ママの願いを叶える為には、自分が何をするべきか考えた。


だけれど、私にはまだその答えを出す事が難しかった。

幸せの基準は人其々で、例えば私が将来誰かと結婚して子供にも恵まれたとしても、私が幸せだと感じなければ、それは幸せとは言えないのだ。


私はそう思ったけれど、にっこりとママに笑顔を向けた。


「私はママの娘になれて、それだけで幸せだよ?」


私がそう言うと、ママの綺麗な蒼い瞳が涙で滲んで見えた。



「ありがとうアンナ。さぁ、明日から学校もあるし、今日はもう休みなさい。」


ママはそう言って立ち上がり、ウィスキーのボトルを棚に戻すと、カップを流しに片付けた。


「うん、お休みなさいママ。」


私はママの後ろ姿にしっかりと抱き付くと、それだけを言ってリビングを出た。

きっと、ママは今は一人で居たい気分なんだろうと何となく感じた。