ママは時折溜め息を吐きながら、やっぱりウィスキー片手にタバコを吸っていた。


そんな荒れた様子のママは今まで見たことなかったので、私はひどく胸が痛くなった。


それに今日は、私もママに迷惑を掛けた。
沢山泣いたし、突然意味不明な事を言い出した娘もママのイライラの原因なのかもしれない。

ママが丁度10杯目のウィスキーをカップに注ごうとした瞬間、私は耐えられなくなってママに声を掛けた。


「ママ?……飲み過ぎじゃない?」


私がそう言うと、ママはその手を一瞬止めたけれど、やっぱりカップにウィスキーを注いだ。


「大丈夫よ。こんなんじゃ酔わないわ。心配してくれてありがとう。」


ママはそう言って優しく笑った。

何だかその笑顔が、とても寂しそうに見えるのは私の気のせいなんだろうか。


「アンナは本当に優しい子に育ってくれて、ママ本当に嬉しいわ。」


ママの言葉に私はどう反応したら良いのか分からなかった。

私は決して良い子じゃない。

今は少しだけ反省しているし、落ち着いているけれど、獲物が目の前に現れたらまた私もきっと心が荒れるだろうし、復讐したいと願うだろう。

それがどんなに悪い事でも、私は躊躇わないと思う。

だけれどほんの少しだけ、そんな過去を忘れて生きる事も考えていない訳じゃない。

でもそれは私にとっては、簡単に選択出来る事じゃない。


だから私はアンナにはなれないのだ。