波多野さんと呼ばれた中年の男性に、私は見覚えが無かった。
だけれど突然その男性は私を見てこう言った。
「おや?まさかアンナちゃんかい?」
私は何故この人が自分を知っているのか分からなくて、無意識にママの影に身を潜めた。
「いやぁ、驚いた。こんなに大きくなったんですね。」
波多野さんはそう言って、にこやかにママに話しかけた。
「おかげさまで、もう14歳なんですよ。時間が経つのは早いですね。」
「本当ですね、あんな小さかったのに、もう立派なレディになられて、驚きました。」
私は話が良く分からなくて、思わずママの手をぎゅっと握った。
「あら?アンナ覚えてないの?」
ママは私の仕草に気付いてそう言った。
「波多野さんは、アンナの部屋の家具を全部特注で作って下さったのよ。」
「え?」
「あなたの部屋にある家具は全部、ここでお願いして作って頂いたの。」
私は驚いて波多野さんに視線を向けた。
ニコニコと人の良さそうな笑顔を私に向けるこの人が、まさか職人さんだなんて思いもよらなかった。
「そう、なんですね。」
私は何て言ったら良いのか分からなくて、曖昧に笑っておいた。
「あの、波多野さん申し訳ないのだけれど、この子のソファが汚れてしまったの。新しいのが欲しいのだけど。」
ママは申し訳なさそうにそう言った。

