叶う。 Chapter2





波多野さんと呼ばれた中年の男性に、私は見覚えが無かった。
だけれど突然その男性は私を見てこう言った。


「おや?まさかアンナちゃんかい?」


私は何故この人が自分を知っているのか分からなくて、無意識にママの影に身を潜めた。


「いやぁ、驚いた。こんなに大きくなったんですね。」


波多野さんはそう言って、にこやかにママに話しかけた。


「おかげさまで、もう14歳なんですよ。時間が経つのは早いですね。」

「本当ですね、あんな小さかったのに、もう立派なレディになられて、驚きました。」


私は話が良く分からなくて、思わずママの手をぎゅっと握った。


「あら?アンナ覚えてないの?」


ママは私の仕草に気付いてそう言った。


「波多野さんは、アンナの部屋の家具を全部特注で作って下さったのよ。」


「え?」


「あなたの部屋にある家具は全部、ここでお願いして作って頂いたの。」


私は驚いて波多野さんに視線を向けた。
ニコニコと人の良さそうな笑顔を私に向けるこの人が、まさか職人さんだなんて思いもよらなかった。


「そう、なんですね。」


私は何て言ったら良いのか分からなくて、曖昧に笑っておいた。


「あの、波多野さん申し訳ないのだけれど、この子のソファが汚れてしまったの。新しいのが欲しいのだけど。」


ママは申し訳なさそうにそう言った。