叶う。 Chapter2





「あ、じゃあ和也君に何時がいいか聞いておいてね?」


ママはリビングを出る寸前だった私に、さっきよりも大きな声でそう言った。

別にママに悪気は一切ない。
部屋を出ようとした私に、いつもの様に呼びかけただけに過ぎない。

だけれど私の心臓は鼓動を早めた。

私はこっそりとソファに視線を移すと、何故か苦笑いを浮かべるレオンと視線が合った。
シオンは扉とは反対を向いているので、その表情は分からないけれど、レオンの様子から何となく想像出来た。

きっとレオンもシオンを刺激したくなかったんだろう。

でも仕方ない。
ママに悪気は一切無いのだから。


「うん、聞いてくる。」


私はママにそれだけを言って、逃げるように自分の部屋へと向かった。

部屋に戻ると、途端に嫌な汗が全身を流れ落ちる。
せっかくシオンの機嫌が昨日よりだいぶマシに見えたのに、また私は余計な刺激を与えてしまった。

ママが悪いわけじゃないけれど、今日ばかりは勘弁して欲しかった。
だけれどママは何も知らないのだから仕方が無い。


私は鼓動を早めた心臓を落ち着けるように、ゆっくりと深呼吸した。


そして扉を背にしてズルズルとその場にへたり込む。


毎日、こんな生活をしていたら正直私の身体はもたないかもしれない。
元々頑丈に出来ている身体じゃないし、今は何より精神が崩壊寸前だ。