「あ、じゃあ和也君に何時がいいか聞いておいてね?」
ママはリビングを出る寸前だった私に、さっきよりも大きな声でそう言った。
別にママに悪気は一切ない。
部屋を出ようとした私に、いつもの様に呼びかけただけに過ぎない。
だけれど私の心臓は鼓動を早めた。
私はこっそりとソファに視線を移すと、何故か苦笑いを浮かべるレオンと視線が合った。
シオンは扉とは反対を向いているので、その表情は分からないけれど、レオンの様子から何となく想像出来た。
きっとレオンもシオンを刺激したくなかったんだろう。
でも仕方ない。
ママに悪気は一切無いのだから。
「うん、聞いてくる。」
私はママにそれだけを言って、逃げるように自分の部屋へと向かった。
部屋に戻ると、途端に嫌な汗が全身を流れ落ちる。
せっかくシオンの機嫌が昨日よりだいぶマシに見えたのに、また私は余計な刺激を与えてしまった。
ママが悪いわけじゃないけれど、今日ばかりは勘弁して欲しかった。
だけれどママは何も知らないのだから仕方が無い。
私は鼓動を早めた心臓を落ち着けるように、ゆっくりと深呼吸した。
そして扉を背にしてズルズルとその場にへたり込む。
毎日、こんな生活をしていたら正直私の身体はもたないかもしれない。
元々頑丈に出来ている身体じゃないし、今は何より精神が崩壊寸前だ。

