リビングに向かうと、廊下には美味しそうな香りが漂っていた。
それだけで、ママが居ることが分かる。
ママが家に居ることに、私はすごく安心感を抱いた。
ママが居れば、いくらシオンでも昨日みたいに酷い様子にはならないだろうと思うからだ。
なんだかんだ言ったって親子なのだから、ママのシオンに対する愛情は本物だろうと思う。
流石のシオンでも、まさかママを苦しませるような真似はしないはずだ。
私はリビングに辿り着くと、ゆっくりとその扉を開けた。
「あら!?アンナどうしたのその顔?」
扉を開けた私に気付いたママが、キッチンから慌てて私の元に駆け寄ってくる。
パタパタとスリッパで音を立てながら私の目の前にやってくると、私の顔を心配そうに覗き込むママに何だかとても胸が痛い。
「何かあったの?」
ママは私の髪を撫でながらそんな事を聞く。
あなたの息子のせいですよ、なんてとてもじゃないけれど言えないので、私は笑いながらこう言った。
「昨日、優勝出来たのが嬉しくって。夜なんかずっと泣いちゃってたの。」
私がそう言うと、ママは何だか納得出来てない顔をしたけれど、私の嘘に騙されてくれるつもりになったみたいだった。
「そうなの?言ってくれれば一緒に寝たのに。」
ママは優しくそう言って、私の肩を抱いてダイニングテーブルに座らせた。

