だけれど私だって、ちゃんと心がある。
あの子が傷つかないように、私はそれを保護する為に生まれた存在であることは間違いない。

私はあの子が耐えられない程の苦痛に耐えてきた。
シオンが大切に想うあの子を必死で守ってきたのは、私なんだ。


だけれどシオンという存在が現れた事で、私のあの子を守る役目が終わった。

だから私はずっとあの暗闇の中で、影を潜めて生きてきた。


それを目覚めさせたのは、間違いなくシオンが原因だったのに、何故私ばかりがこんな仕打ちをされなくてはいけないのだろうか。

だけれどシオンの中の悪魔を目覚めさせてしまったのは、間違いなく私だ。


その時私はふと、気付いた。

シオンにとっても、あの子にとっても、2人一緒に居る事でお互いの人格を支え合っていたんじゃないかという事に。

シオンにとってはあの子が必要で、あの子にとってはシオンの存在が必要不可欠だったんじゃないか。

それがあの日、あの子はシオンが避妊をしてくれなかった事によって、自分はシオンに愛されていないと勘違いをした事がそもそもの発端だった。

そしてあの子はシオンに対する自分の気持ちに気付いた。

だけれど兄妹として生きてきたあの子には、その気持ちを伝える勇気すらなかった。

だから等々、あの子は耐えられなくなってその姿を隠すことにしたのだ。