そんな私の考えとは裏腹に、レオンは相変わらず楽しそうに刺青男と話をしていた。

こっそりと会話に耳を傾けると、どうやら樹の代わりの人材を探しているようだった。


「ある程度人脈があって、絶対に裏切らない人間なら誰でも良い。」


レオンがそう言うと、刺青の男は暫し考える素振りを見せた。


「あ、でも女関係だらしない奴はダメ!」


そう言ってレオンは目を細めた。
多分、凛のあの酷い状態を目の当たりにしたからそう言ったんだと思った。


そう言えば、樹は一体どうしたんだろうか?
私は気になって、またシオンの耳元で聞いてみた。


「ねぇ、樹はどうしたの?」


私の問いに、シオンはまた冷笑を浮かべた。
多分、普通の人がその笑い方をしたら凄く相手を不快な気分にさせるに違いないけれど、シオンはそんな笑い方が似合う。


「気になるのか?」

「…うん。」

「安心しろ、アイツは生きてる。」

「……。」


何処で生きてるのか気になった私は、ゆっくりとシオンを見上げてその冷たい視線を無言で捉えた。


「アイツはもう日本には居ない。」


シオンはそれだけ言って、視線をそらした。


私は益々意味が分からなくなった。

日本に居ないって事は外国に居るって事だし、外国に行くには普通に考えたらパスポートやら色々必要な物があるはずだ。

あの後、樹本人がそれを用意して自ら海外へ行ったと言う事は考えられない。