それは多分、発表会が終わった事で少しだけ羽目を外したい気分だったからだと思う。


私が立ち止まると、ママは驚いたように一緒に立ち止まった。

私はシオンじゃなくて、レオンに向かって話し掛けた。


「何処に行くの?」


私の言葉に、シオンとレオンが同時に立ち止まって振り返った。


「クラブにちょっと顔出すだけだよ。」


レオンは不思議そうな顔をして、首を傾げて私を見た。


「私も行っちゃダメ?」


私がそう言うと、シオンは明らかにうざったそうな顔をした。


「俺は良いけど?」


レオンは特に気にもしないようにそう言って、私に手を差し出した。


「行っても良い?」


私はママを見上げて、好奇心たっぷりにそう聞いた。

ママは一瞬考える表情を見せたけれど、私が好奇心旺盛な表情をしていたのが良かったのか呆れたように笑ってこう言った。


「良いけど、体調大丈夫?」


「うん!大丈夫だよ!」


「じゃあ、たまには行って来たら?アンナも色々経験したい年頃なのね。」


ママの言葉にシオンをちらりと盗み見ると、まるでたった今誰かに唾を吐き掛けられたかの様に不快な表情をしたけれど、直ぐに溜め息をついてそっぽを向いた。

多分、シオンはそんな私がお気に召さなかったんだろうけれど、私は気にしなかった。


だから私はレオンに差し出された手をしっかりと繋いで、夜の街へと繰り出した。