「君の名前は?」


真っ白な室内で、永島先生が私にそう言う。
もう何度目か分からない同じ質問に、正直うんざりだった。


「私の名前は月島叶だよ?」


私は笑顔を作って、先生にそう告げた。
何度言われても答えは同じ。

いい加減にして欲しいと正直思うけれど、先生は何度も同じ質問を繰り返す。


「君は、今まで何をしていたか覚えているかい?」


先生はまるで幼児にでも話しかけてるみたいにそんな事を言う。


「私は何もしてないよ?ただ、退屈な毎日を過ごしてただけ。もうじきピアノの発表会があるから毎日練習してたし、普通に学校に通ってたの。」


「君の家族の名前は?」


「ママは月島リサ、兄は紫音(シオン)と玲音(レオン)。」


私はそう言って、にっこり笑った。

先生は話を聞きながら、何かをカルテに書き綴ってる。


「じゃあ、君はアンナなんだね?」


「そうだよ。」


「分かった。君がアンナだと言うことは分かったけど、君は、昨日までのアンナと違うんだ。だから、なぜそうなったのか、何か君の中で変化があったのかい?」


先生は探るような目付きでじっと私を見つめている。
正直なところ、唾を吐きかけてやりたいと思うけれど、そんな事をしたら、折角自由になったのに病院送りにされるだろう。