控え室には、既に10人くらいのライバル達が各々に自分の出番を待っていた。

確か今年の中学生の部は全部で20人くらいの人数だった気がする。

毎年春に予選があるけれど、私は昨年入賞したので今年はそのまま本選の案内が届いていた事をふと思い出した。


私とシオンが控え室に入ると、全員の視線が一斉にこっちを向いた。

多分、皆が見ているのはシオンなのだろうと感じるけれど、何だかとても居心地が悪く感じる。

去年見た記憶がある顔もあれば、今年初めて見る顔もあったので私はその威圧感に圧倒されないように、きっちりと背筋を伸ばして立った。

絶対に負けないと、多分この場に居る全員が同じ事を考えているだろう。


シオンはあまりに見つめられる事にうんざりしたのか、私の手を引いて控え室の隅に用意された椅子に私を座らせると、自分もその隣に静かに座った。


それでもやっぱり見つめられるので、シオンは諦めたように溜息を吐くと小さな声でこう言った。


「付き添いはどこまで行けるんだ?」

「多分、舞台袖まで。」

「じゃあ、そこから見ている。しっかりやれ。」


シオンはそう言って寝た振りを始めた。
目を閉じていれば、確かに周りの視線は気にならないだろう。

何だか命令口調が癪に触ったけれど、私はシオンがこの場に来てくれたから落ち着いて居られるのだ。

贅沢を言ってはいけない。