叶う。 Chapter2





それは今までやってきた全ての事を投げ出すって事だ。
ママも先生も、レオンやシオンも、全て投げ出して逃げ出したいと思った。

だけれどどうする?

まだ中学生の私が、家を無くして生きて行く事が出来るのだろうか?

事情を話す?
だけれど私が子供の頃にされて来たことは、きっとママは知らない。

そもそも誰も知らないはずだ。

なぜなら、あの子自身が知らない。
私が、入れ替わってた事すら気付いて居なかった。

私がそれをママに伝えたら、私があの子じゃないことが公になってしまうのだ。

そしたらきっと、ママは私を入院させてでも元のあの子に戻そうとするかもしれない。

だったらどうする?

私はひどく頭が痛んで、鏡の前に両手をついて項垂れた。

とにかく、今は冷静に物事を判断する思考力がない。

なんとか落ち着かせようと、必死に深呼吸を繰返したけれど、気持ちは一向に治まる気配すらない。

ダメだと考えれば考えるほどに、意識が混乱してしまう。


もう、ダメだ。
ここは、具合が悪い振りをして倒れよう。

助かる道はそれしかない。


これだけ努力してきた事が全て無駄になってしまうのは、心底悲しいけれどそれ以外の方法は私には思い付かなかった。

あいつの前で、冷静に演奏をこなすことなんてどう考えても無理だ。


私は泣き出したい衝動に駆られたけれど、なんとか堪えてふらつく足でトイレを出た。