そんな事はもう出来ないけれど。
だってあの子はもう、暗い暗い海に飲まれてしまったのだから。
だからシオンがどうしようが、アンナとしてこれから死ぬまで生きるのは私。
私はゆっくりとシオンに近付くと、優しく抱き付いた。
「私だけが、アンナを起こす事が出来るし、アンナと接する事が出来るの。だけど、シオンが余計な事しちゃったら、アンナは永遠に眠り続けるかもよ?」
私がそう言うと、シオンは諦めたかのように溜め息を吐いた。
だけれど、これで大丈夫だろう。
シオンは馬鹿じゃないから、私の言っている意味をちゃんと分かってるはずだ。
余計な事を言えば、大好きなあの子を傷つけられると思っているのだろう。
「ねぇ?今日は"しないの"?」
私は少し甘えた声でそう聞いた。
「……したいのか?」
「疲れたから。したくないよ。」
私はそう言うと、シオンから離れた。
正直なところ、シオンとの身体の相性はすこぶる良好で、別にしたくない訳じゃなかったけれど、自分から求めるのも癪に触る。
シオンはそんな私を気にもしなかった様子で、冷蔵庫に向かって行って水を取り出した。
そんな態度になんだか微妙にイライラするけど、私も無視してリビングを出た。
そしてそのまま、バスルームに向かった。

