叶う。 Chapter2





そんな事はもう出来ないけれど。
だってあの子はもう、暗い暗い海に飲まれてしまったのだから。

だからシオンがどうしようが、アンナとしてこれから死ぬまで生きるのは私。

私はゆっくりとシオンに近付くと、優しく抱き付いた。


「私だけが、アンナを起こす事が出来るし、アンナと接する事が出来るの。だけど、シオンが余計な事しちゃったら、アンナは永遠に眠り続けるかもよ?」


私がそう言うと、シオンは諦めたかのように溜め息を吐いた。
だけれど、これで大丈夫だろう。

シオンは馬鹿じゃないから、私の言っている意味をちゃんと分かってるはずだ。
余計な事を言えば、大好きなあの子を傷つけられると思っているのだろう。


「ねぇ?今日は"しないの"?」


私は少し甘えた声でそう聞いた。


「……したいのか?」

「疲れたから。したくないよ。」


私はそう言うと、シオンから離れた。

正直なところ、シオンとの身体の相性はすこぶる良好で、別にしたくない訳じゃなかったけれど、自分から求めるのも癪に触る。

シオンはそんな私を気にもしなかった様子で、冷蔵庫に向かって行って水を取り出した。
そんな態度になんだか微妙にイライラするけど、私も無視してリビングを出た。

そしてそのまま、バスルームに向かった。