私は目を閉じてやっぱり膝の上で指先を忙しなく動かしていた。
鞄から楽譜を取り出した時にシオンが私の手を離したので、今度は両手を使って頭の中だけでひたすら演奏を続けた。
舞台はまだビロードのカーテンで仕切られていて、中の様子は分からないけれど、毎年そのカーテンの先にはスタインウェイのグランドピアノと少し離れた場所に10人程度の審査員席があるのを私は知っている。
会場はとても広いけれど、控え室はそんなに広くないので、演奏する順番に時間になると控え室に向かうように決められている。
幼児から始まって、小学校低学年、高学年の部が始まると私は控え室に向かわないといけない。
控え室への付き添いは基本大人一人だけだ。
中学生は付き添いは居なくても構わないけれど、私は衣装やらメイクやらが苦手なので去年もママについて着てもらった。
時間を見ると、あと30分くらいで開演する時間だった。
レオンが飲み物買ってくると席を立ったので、私もトイレに行きたいと言ってレオンと一緒に席を立った。
「衣装汚さないように。」
ママに小声でそう言われたので、きっとママは衣装に色々偽装したのがずれないように気をつけろという事が言いたかったんだと思った。
私はレオンに連れられて会場の休憩室に向かった。
レオンが飲み物を買っている間、私は近くのトイレに入る。
トイレはすごく混雑していたけれど、レオンは外で待ってると言ったので私は少し急いでパウダールームに入った。

