叶う。 Chapter2





しばらく待つと、ママが慌ててやってきた。
ママは少し疲れた顔をしていたけれど、この嵐のような天気の中ここまで来るのは誰でもしんどいだろう。

ママは入場口でチケットを見せて、私達はそのままホールに向かった。

指定されている席はいつも何故か貴賓席なので、私達はその場所に向かう。

何故貴賓席なのかは全く不明だけれど、多分大人の事情ってやつだと私は密かに思っている。


普通のホール席と違い、貴賓席は極少ない人数しか入れないので居心地はとても良い。

しかも2階の真正面から見れるので、とても見やすいわりに周りからは見られない。

ママはいつもそこにカメラマンを頼んで私の演奏を撮影させたりもする。

だから毎年私の発表会はきっちり記録されている。
それを見ることはあまりないけれど、いつかまとめて見てみたいと思っている。


席に着くと相変わらず双子は並んで座りたくないらしく、ママ、先生、レオン、私、シオンの順番になっていた。

だけれど私はもうそんな事はどうでも良かった。

正直緊張しすぎて吐きそうだったし、何よりも頭の中が真っ白だった。

これはまずいと思って、私はシオンから鞄を受け取るとひたすら楽譜を頭に叩き込んだ。

だけど楽譜を見た所で、もうきっちりと頭には入っているので、私はピアノに触りたくて仕方なかった。

ピアノさえ目の前にあれば、勝手に指が動くくらいの練習をしてきたのだからそれは当然だった。