ひどい悪天候の中、車内の空気は和やかだった。
と言っても、先生とママがほとんど二人で会話をしていただけだったけれど、それでもさっきまでの無音の空間じゃないだけでも随分と気が紛れた。
先生とママはクラシックについて話をしていたので、たまにレオンも会話に参加しては先生を驚かせていた。
「あら、お兄さんも何かやってらしたの。」
どうやら先生は双子がヴァイオリンをやっていた事を知らなかったらしい。
「3才からヴァイオリンを。」
レオンはそう言って、爽やかな笑顔を先生に向けた。
双子は私とは違う先生に、小学校卒業までピアノも習っていたけれど、先生にそれを言う気は無さそうだ。
「まぁ、兄妹揃って素晴らしいわね。きっとお母様の育て方が素晴らしいのね。」
先生はそう言って、満足そうに頷いた。
私はピアノをやっている癖に、あの子はクラシックに興味がなかったからそんなに詳しい事まで知らないので、ただ黙って先生達の会話を聞いていた。
そんな和やかムードの車内も、会場が近づくに連れて段々と空気が変わって来た。
私はなぜかひどく緊張して、無意識にシオンと繋いだ手をぎゅっと握ってしまった。
シオンはそんな私に視線を向ける事はなかったけれど、ただ少しだけ私の手を強く握り返してくれた。

