叶う。 Chapter2





「お帰り。」


私が視線を向けると、そこにはシオンの姿があった。

相変わらず冷めた蒼い瞳で私をじっくりと眺める。

多分、私がどちらなのか判断しようとしているのかもしれない。

「ご飯は?」

私は冷たい視線をものともせずに、そう聞いた。

「……。」

相変わらず表情を変えずに私をじっと見つめるその視線に、何だか無性にイライラする。
だから、私はこう言った。

「昨日の事、ママに黙っててくれてありがとう。」

「…………。」

「お陰で助かったの。色々とね。」

「……アンナはどこにいる?」

「アンナは目の前に居るじゃない?」

「お前がアンナなのは分かってる。もう一人の方だ。」

やっぱり、この人は誤魔化せない。
だけれど、この人は私を傷つけたりしないことを私はちゃんと知っている。

「さぁ?何だかとても眠たいって言ってたから、暫く眠るんじゃない?」

「…………。」

シオンは私を睨み付けた。
その鋭い眼光に一瞬だけ怯えてしまいそうになったけれど、悟られちゃいけない。

「アンナは貴方のせいで出てきたくないの。でも、この事を黙っててくれるって約束してくれたら、アンナに私から伝えてあげる。」

私はしっかりとシオンの瞳を見据えてそう言った。