私は診断書を丁寧にしまって、元通りの状態に直した。
そして全て元通りになったのを確認すると、ママの部屋を出た。
正直少し安心した。
私の一番の心配要素は永島先生だったからだ。
小さい頃から、ずっと私の担当医だったあの先生は、ちょっとした変化にもいつも抜け目なく監察してきたから、私は隠れるのが大変だった。
だけれど、結果としてあの子が馬鹿だったから助かった。
私と入れ替わる時、あの子は必ず気を失ってくれた。
だから、あの子は私の存在自体知らなかった。
後は適当に検査とカウンセリングを受ければ問題ないだろう。
私はそう考えて、一人でご機嫌だった。
そのままリビングに向かい、少し遅めの夕飯を食べる事にした。
誰も居ない家はとても居心地がいい。
静かだし、自由に出来るし、何より自分を作る必要がない。
私は五十嵐さんが用意していってくれた、夕飯を温めなおしながら明日からの事を頭の中で考えて、じっくりと計画を練った。
夕飯の仕度を終えてテーブルに着くと、何やら玄関で物音がした。
多分兄達が帰宅したのだろうけれど、私は気付かない振りをしてそのまま食事を続けた。
わざわざ顔を見たくもなかったし、疲れているので極力相手にしたくもなかった。
ちょうど食事を終えて、食器を洗って食器洗い機に並べていると、リビングのドアが静かに開いた。

