和也が帰ってから、私はまた一人防音室にこもった。


頭の中ではさっきの出来事を思い出し、何か言ってはいけない情報を漏らさなかったか冷静に考えた。

大丈夫、きっと和也はこの事は口外することはないと思う。
話した内容は、どれもきっと普通に生きていたら重すぎて、簡単に人に話せるような内容じゃない。

一人になれば、こうして冷静に色々な事を考えられるのに、私はどうも和也を前にすると色々な事に関して無防備になってしまう。


それでも私はあの子と違って、色々な事を考えるし、対応出来ていると思う。
現に和也にだって、一瞬は疑われたかもしれないけれど、今は全く疑っていないだろう。


それに、いざとなれば私は自分の意思で自分の存在を消すことも出来る。
全てが終わったら、私は自分の存在を無くす事だって出来るのだ。

だからそんなに深く考える必要もないし、物事を複雑にする必要もない。


だけれど、何故だろうか。
私は和也を失う事が、とても怖くて仕方がない。


今日だって、何も言わずに別れを選ぶ事も出来たはずなのに、私はそれを選ぶ事が出来なかった。

自分がした事なのに、和也と離れて冷静になれば自分が間違っていたと分かる。


誰かに心を許す事は、とても愚かで無駄な事だって、きちんと理解しているはずなのに。