ママは私を自宅に送り届けると、直ぐに仕度をして仕事に向かってしまった。
自宅には五十嵐さんが来ていたけれど、もう帰宅する時間だったので、私は丁寧にお礼を言って玄関先で少し会話を交わした。
「アンナお嬢ちゃん、とっても似合ってますよ。とっても可愛い。」
「ありがとうございます。それより五十嵐さんごめんなさい、私が怪我をしちゃったので、出勤日数を増やして頂いたみたいで……。」
私は反省しているように、しゅんとした態度で頭を下げた。
「いえいえ、良いんですよ。仕事ですから、アンナお嬢ちゃんも早く怪我が治るように養生して下さいね。」
「いつもありがとうございます。」
「ではまた明日伺いますので、ゆっくり休んで下さい。」
五十嵐さんは優しくそう言うと、玄関を開けて帰っていった。
私はようやく一人になって、大きく伸びをした。
やっと解放された気分だ。
何だかんだ言っても、まだ安心は出来ない。
万が一おかしな態度をしてしまえば、病院送りにされる可能性は充分ある。
油断は禁物。
私は玄関の鍵をきっちり閉めると、とりあえず自分の部屋に向かった。
兄達が何時に帰宅するのか分からなかったので、少しだけ様子を見る事にした。

