「俺、野球したくてこっちきたけどさ。
その…好きな子が出来た!」


浩一


照れすぎ…



野球部は昼飯を寮で食う
昨日の昼
先輩に頼まれて、ジュースを買いに走った
しかし、先にいた女の子が買ったら売り切れランプがついた
「げっ!!」
浩一の声を聞いて、女の子はジュースを
「クスッ。どうぞ!」
くれたらしい
そして、他のジュースを買って友達といなくなったとか


「まて!
お前!礼も言ってなけりゃ、金も払ってないのか?」

「そうなんだよ。昨日から罪悪感やらで
俺の心臓すげぇぞ!」

「しらねぇ」

「一緒にその子を今日探してほしい!」


入学して1ヶ月


浩一に春が来た


ありがたいことに、学年でスリッパの色が違う

その子は、俺らと同じ赤

校内にあるいくつかの自販機の中で、野球部寮の近くでジュースを買うのは

間違いなく 〝 看護科 〟

俺ら二人、かなり怪しいだろう

休み時間のたびに、看護科の校舎をジロジロ見てる
普段、寮で飯食う浩一も今日の昼飯は
看護科を見張るため、教室で食う

同じクラスで俺と同じ銃剣道部の松本に
学食のパンを頼んだ

松本と俺はいつも教室で食う

浩一の席を借りて

今日は、窓に向かって3人で食う

金を返すという口実で松本にも話した

堂々と看護科が見れると喜んで引き受けてくれた

俺は浩一の為、
でも、特長も知らないからただ見てる

松本は、自分の好みを探す

「あっ!!あの子!!」

浩一が立ち上がる

ショートカットの細い子だった

ん?

見たことある

「ああ。バスケ部の…
えーと。舞って呼ばれてた子?だよな?」

松本が俺に振る

「名前は、知らんがバスケ部にいたな」

銃剣道部は体育館のステージで稽古する

その下でバスケ部

バスケ部の隣にバレー部

体育館は3つの部で使ってる

「どうしよ!」

「普通に昨日ありがとうでいんじゃね?」

「えっ!えっ!いいかな?」

「さっさといけ!」


2人で浩一を追い出し、様子をみる

学食から、教室へ戻る途中のその子に


声を掛けれず戻ってくる


「ヘタレかよ!」

「金返すだけだろ?免疫なさすぎ!」


「いや…忘れていた
野球部は看護科に声かけたらいけないんだった…」

「「 は!? 」」



看護科の校舎には、男は入れない

野球部である浩一は、声をかけられない

かといって、俺らが代わりに返すなんて

違う


「とにかく、看護科1年 舞ちゃん!
借金相手が分かって、よかったな!」


松本は、浩一の恋心なんて知らない


「そうだな」


しょんぼり肩を落とす

浩一が小さく見えた