【佐山の気持ち】

「七瀬!」

謹慎室のドアを開け、中に入る

「よ!」

七瀬は、元気に手を上げた

取り乱してはいけない

「おう!!」

机の上の紙に目が行った


〝 反省文
七瀬 結

生きててすみません。 〟


「なんだよこれ……」

「菅井に言われたの、あたし生きてる価値のない奴だって…
反省しろっていうから書いた!」

「んな訳ねぇだろ!!」

俺は冷静でいられなくなった

七瀬の胸ぐら掴んだ

はじめて女に手を上げた

バシッ

「薫、あたしが悪いの?」

ハッ違う…… 俺はなんてこと……

「健ちゃん…あたしが殺したの?」

七瀬?

「ごめんなさい」

「七瀬… 殴ってごめん」

「学校辞める」

「七瀬…ダメだ!!負けるな!!」

「死にたい…」

ガタガタと震え出す七瀬を
抱きしめてやりたかった

でも…

七瀬は部屋の隅に座り込んで

「ごめんなさい」

と何度も繰り返し暴れて

俺を拒む

「七瀬!大丈夫!落ち着けって!」

いくら言っても震えが酷くなる

呼吸もおかしい

保健の木谷先生に応援を頼む

木谷先生と無理矢理、抑えつける

木谷先生の表情が変わった

「ナナちゃん…いつから?」

訳分からないまま七瀬を抱きしめていた

「病院行きましょ?」

「いや……」

「木谷先生?」

「ナナちゃん、寮を出てからずっと?」

「ごめんなさい」

「ナナちゃんが謝ることはないのよ」

木谷先生の指示で、震えが落ち着いてから七瀬を保健室に寝かせた

「佐山先生…七瀬さん虐待を受けています」

廊下でボソッと俺に言う

「見えたんですお腹に痣が」

家にいて、ずっと虐待されてたのか?

「リストバンドの下、傷があるかも」

保健室に戻り七瀬のリストバンドを取る

「!!!!」

目を覚ました七瀬が話し出す

「骨折したの……」

「七瀬…」

「健ちゃんが手術受けさせてくれて…」

「七瀬…」

「自殺とかそんな傷じゃないから…」

「俺は、頼りないか?」

「ふっ…いい先生だよ……健ちゃんさ
この学校でまともな教師は、佐山先生だけだって言ってたよ
あたしも……そう思う


薫……」


七瀬の目から涙が静かに流れた

七瀬が泣くのを初めて見た

高橋の葬式でも、泣いてなかった

ずっと……我慢させていたんだ

もっと……早く気づいてやれば


「でも…もう平気!!
健ちゃんのお母さんがね……
アパート借りてくれたから
だから……ほっといて?警察沙汰とか嫌」

「今日部活ないし、俺がそのアパートまで送るからな!ちゃんと話聞かせろ!!」

「1人で帰れるのに…」


力なく笑った七瀬の涙を手で拭いた