イタリア ーピエモンテ州アレッサンドリア ー
白塗りに赤い屋根が立ち並ぶ街に黒ずくめの男達が慌ただしく走り回っていた。
『あるもの』を探して。
もう何件回っただろうか、男は乱れた呼吸を落ち着かせようと深く深呼吸する。
春とはいえ夜になればまだまだ肌寒い。
白い息が吐き出されては空気に混じって消える。
そこへ白衣を着た男がドタドタと駆け寄ってきた。
「いたか?!」
「いや、どの家にも匿っている様子は見られなかった・・・」
はぁ、と長い溜息を漏らす。
そうかと項垂れるように言うが声は苛立っていた。
「くそっまさか自分で体内に埋め込まれた“チップ”を抜き取るだなんて・・・ッ」
そう言い近くにあった植木鉢を乱暴に蹴った。
ガシャーンッと荒々しい音を立て、植えられた花と土がぶちまけた。
よせ、と男はなだめる。
「逃亡ルートはわれてるんだ、そのまま辿っていけばいい事だろ?」
「アイツはどの被検体よりも優れた機能を持った“ドール”だぞ?!ちんたら探していられるか!!!」
苛立ちが頂点に上がったのか男は興奮気味に続けた。
「アイツさえいれば世界なんてちっぽけな玩具箱さ!軍隊など取るに足らない!!アイツは最高傑作なんだ!!!!僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール僕のドール!!!あぁ何処にいるんだ!!!!」
気持ちが悪い・・・。
一言で言ってしまえばこんなものだ。
本当に気持ちが悪い。
男は内心とは裏腹に優しく白衣の男を再度なだめる。
「大丈夫だ、今他の奴らが日本に向かっている。最後に追跡が途切れたのは羽田空港辺りだからな」
そう男が言うや否や白衣の男は嬉々と瞳を輝かせる。
あぁ気持ちが悪い・・・・・・。
「よし、それなら日本へすぐに向かおう!!!あんな小さな国ならすぐに見つけ出せる!!!」
そうだな、と短く相槌を打つと男は空を見上げた。
向こうはきっと夜明けだろう。
どうか見つからないところへ逃げてくれ・・・・・・・・・そう願って瞼を閉じる。

