――「何、ココ。」
パーティー当日。
薫ん家のリムジンで会場まで送ってもらったのは良かった。
いや、こんないかにも高いドレスと、胸元に光る値段なんて聞きたくもないネックレスと耳に光る真珠のピアスにかかとが高すぎて履いたこともないヒールを身に纏った時点で、パーティーへの出席意欲はめっきり削られてはいたけど。
でも、でも、なんとか薫に激励をもらいつつやってきた。
でもしかし。
ドデカすぎるヨーロッパ風のお城を目の前にして、足がすくまないというほうがおかしい。
だいたい、私はこんな値打ちの張るドレスより、普段働いているカフェの制服姿の方が似合うような庶民だ。
や、やっぱり、断ればよかった…。と、今になって後悔したって、もう遅い。
次々とヨーロッパ城の目の前に豪華なリムジンが止まって、いかにも気品のある方々が下りられてはリムジンはその場から去っていく。
あんな人たちがいっぱいいるところに、私は今から突っ込んでいくの?
「いやいや、自殺行為にもほどがあるでしょ…。」
あー、行きたくない。
ヨーロッパ城を目の前に、これから起きるであろう事態を想像すると、もう負の感情しか生まれない。
「よし、出席したらすぐ帰ろう!」
うん、と頷きつつ高いヒールを踏み出したその時――、
『随分デカい独り言だな?』

