カフェのロゴマークが入った車に乗車し、エンジンをかけていると、マナーモードにしていた私の携帯電話がポケットの中で震えるのを感じて、すぐさま手に取った。
誰?マスターかな?と思って携帯の画面を見ると、意外にも着信相手は薫から。
昨日の夜、今日も仕事だとボヤいていた薫を思い出して、何か緊急事態が発生したのかと思い、通話ボタンを押した。
「もしもし?どうしたのー?」
『あっ、茉央!?』
電話越しの薫の声は、いつもより切羽詰まった様子で、とても焦っているようだった。
「うん、そうだけど。薫、仕事中でしょ?一体どうしたの?」
私の携帯に電話してるくせに、電話相手が私かどうか確認するなんて、いつも冷静な薫らしくもない。
そんな薫に苦笑いをこぼした時だった。
『大変!小鳥遊煌がウチに来た!』
「……は?」
小鳥遊煌…って、
心の中で、その名前を何回も反芻する。
こんな珍しい名前、あの人しかいない。
頭に浮かぶのは、あの夜…――私を婚約者としてパーティーの参加者に紹介したときに彼が零した優しげな微笑みだった。

