「は、はい。こちらのコーヒーは、コーヒー豆をブラジルとコロンビア、そしてグアテマラを独自の配合で焙煎しておりましてコクの豊かな味わいを特徴としました、マスターこだわりの逸品となっております。」
『ほう。では、ほかにどのようなコーヒーがあるのかね?』
「他には、モカ・ハラーとサントスを配合し、焙煎しました、酸味の強いブレンドコーヒーや、インド・ペルー・マンデリンをブレンドし、苦みを強めたコーヒーもございます。また、深煎りで苦み・コクのある豆を使用した、アイスコーヒーもございますし、豆一種類で焙煎しましたストレートコーヒー等ございますよ。」
今の今まで、新人の中田さんでもよかったんじゃないかと思っていたけれど、前言撤回。
これは…私かマスターレベルじゃないと、きっと答えられないほどのハイレベルな質問だ。
『ほう…。コーヒーと一口にいっても、色々あるものだな。また頼むよ。…君の名前は?』
「ぜ、是非!従業員一同、お待ちしております。私は、篠原 茉央と申します。」
『茉央…か、良い名だ。』
「…!」
いかつい男性だなんて言ってごめんなさい。
男性がフッと微笑んだその姿に、威厳なんてなく、優しく穏やかな笑顔を私に向けてくれていた。
…良い人なのかも。
「あ、ありがとうございます。では…失礼いたします。」
パタンッ
「ふーっ…」
会議室1から退室して、ドアに背をついて安堵の溜め息を一つ。
よかったー…私が答えられる範囲の質問で。
あそこで答えられなかったら、絶対もうウチに注文は来なくなったよね。
小さな峠を通り越した私は、気分よく小鳥遊コーポレーションを後にした。

