『この注文、配達希望なんだよ。』
「あ、そうなんですか?ウチのメニューで、しかもコーヒーのみでの宅配なんて、本当に珍しいですねぇ。」
マスターに渡された注文票に目を通して、時に不思議なことはあるものだと思う。
サンドイッチも美味しいのに。残念。
『それで、茉央ちゃんに頼みたいんだ。』
「え?」
『ほら、ボクはココを抜けられないし、新人の中田さんに早速配達なんて仕事、負荷が懸かるだろうし。何かあった時でも、ベテランの茉央ちゃんなら対処できるでしょ?』
「は、はぁ…。」
妙に、ベテランの4文字を強調してきたマスターに、戸惑いを感じずにはいられない。
いつもは、こんなに穏やかな笑顔で威圧感を与えるような人じゃないはずだけどな…。
「別に構わないですよ。それで、配達先はどちらですか?」
この時、マスターの人懐っこい笑顔をこんなに憎んだことはないだろう。
配達先を知ってたら、こんな頼み事受けなかった…はず。
『ん?小鳥遊コーポレーションの会議室1だよ。』

