「婚約なんて、本人同士で進める話じゃないです!」
『そうか?』
「そうです!」
確かに、一般庶民なら、婚約話を本人同士で進めるケースもあると思う。
でも、一般庶民でも、結婚が絡むと本人同士ではなく家族も絡んでくるのは当然で。
むしろ、グループの跡取りの結婚であれば、本人同士で婚約話を進めるなんて有り得るはずがないんじゃないの?
「あの、申し訳ないですけど――この話は、保留にしてください。」
『何で?』
「だからっ、」
なんだか、この人と話していても、これ以上は話が進まないと感じた。
もういい。
帰ろう、薫の家に。
元々、パーティー終わりの愚痴を、薫に聞いてもらう予定だったし。
『おい、どこ行く?』
彼の横を素通りしようとすると、ガシっと腕を彼に掴まれた。
「…帰らせていただきます。この話は、父を通して進めたいので。」
とにかく、ここでYesと言うわけにはいかないんだ。
これは、あくまで薫と彼の縁談話。
茉央である私は全く関係ない。

