ヤバい、と脳内で連呼するだけで、行動には何も移せないまま、周りからは異議が唱え始める。
『一体、その方はどなたなんですの!?』
『この業界では見たこともない顔だぞ!どこの馬の骨かもわからない女より、ウチの娘をっ!』
数分で、色々な声が周りで飛ぶ。
でも、根底にあるのは、私が彼の婚約者というのは納得できない、ということだった。
まぁ、どこの馬の骨か分からない女っていうのは、正確すぎて否定できないけど。
っていうか、このまま周りの声が大きくなってくれればいいのに、と切に願う。
そうしたら、この話はナシになるだろうし、薫に面倒な話も行かない。
『本日、僕からは以上です。…失礼します。』
大衆のザワザワを収集するならまだしも、放置するという思い切った行動に出た彼は、私の手を奪い、フロアを後にする。
「ちょっ…ちょっと!」
『ん?』
ようやく私の手を解放してくれたのは、ヨーロッパ城を出た後。
パーティーを抜けることができたのは、思わぬハプニングではあったけど、今はそんなこと言ってられない。
「勝手に話を進めないでください…!」
『何で?』
「何でって…」
まったく悪びれない彼の態度に、拍子抜けする私。
何でって…いや、おかしいでしょ。

