フロアに戻ると、その場にいた全員の視線が私たちに注がれる。
何々…っ!?
『キャーッ!煌(コウ)様よっ!』
あちらこちらから、女性の歓声が上がる。
コウ…――って、彼の名前…?
彼の言うように、彼の顔も名前も知らなかったのは、この場で私だけだったようだ。
この場にいるもの全員、彼に拍手と歓声をあげている。
それも束の間、すぐにフロア全員の視線が、彼ではなく…なぜか私に向けられるようになった。
『何よ、あの子…!煌様の何なの!?』
私に向けられたのは、彼に向けられていたような熱い視線ではなく、この場が凍るような冷たい、冷え切った視線のみだった。
この雲泥の差は何なのだろう。
金持ちが集結して放つ空気を、庶民の私が読めるわけがなかった。
横から、パーティーのスタッフの男性が、彼にマイクを渡す。
これから、スピーチでも始まるの…?と思っていると、マイクを持った彼が口を開く。
『本日は、我が小鳥遊グループ主催のパーティーに御参加いただき、誠にありがとうございます。』
「っ!?」
彼の放った言葉に、私は驚きを隠せない。
せめて、声を出さなかったことだけは褒めてほしいと思った。

