一瞬、私の耳はおかしくなっちゃったのかと、自分を疑う。
まぁ、確かに、私は日常では考えられないような異世界にいる訳だし、何か幻覚を見たって、幻聴を聞いたっておかしくはない。
『聞いてる?』
「っ!?」
彼の声に我に返ると、ドアップで彼の顔が目の前にあって、背中がのけぞり、またバランスを崩す。
『あっぶねーな、ホントに。』
「す、すいません…。」
またもや、バランスを崩した私を咄嗟に支えてくれた彼。
その反射神経、今だけ私に分けてほしいと思った。
バランスは崩れても、料理が盛り付けられているお皿は手放さなかった自分に呆れる。
花より団子って……マジじゃん。
『で、聞いてた?』
「えっ?」
ホッとしていて、肝心なことを忘れかけていた私に、彼は思いため息をつく。
『俺の花嫁になれよ。』
「っ、」
彼によって縮まった距離。
腰に回された腕。
皿を持っているので、全力で抵抗することも出来ずに、彼に抱きしめられる。

