「掴まって」
「ごめん。そっち無理なんだわ」
左側にいた私を右手が呼ぶ。
「なんで?」
「左腕……外れてる」
「外れてるって…何で平気そうな顔して言うのよ!」
私の声掠れてる……泣いてるのバレるかも。でもそんな事より早く手当てを。
自分より全然大きな徹の身体を支えてうちの中に連れて行って玄関先に座らせる。
「まずなんか拭くもの取ってくるから」
立ち上がろうとした私の体がギュッと徹の右腕で抱き寄せられる。
「徹?」
「決着ついた…」
「え?」
「S……潰した。美潮のこと開放するって約束させたから」
「マジで!?あのSを?」
何をして来たの?
潰したって一体…
聞きたいことは山程あるけど徹の言葉を聞いてたら何も出てこない。
「美潮は自由になったんだ。もう追われる事もない。だから……」
私を抱く腕に力が籠る。徹の胸は雨と土と香水と…それから血の匂いがした。
「俺のとこにおいで」
この間は強引に付き合う事約束させたくせに、いざとなると選択肢くれちゃうんだ。
「私逃げるかもしれないよ?断って別な男のとこに行くかもよ?」
「それでも美潮が選んだ選択なら従う。お前が幸せならそれでいい」
こんなにボロボロになってまで私の自由を掴んでくれて。私の意思を尊重してくれるの?
アンタって自分勝手で………ホントいい奴だよ。
「でももし俺を選んでくれたら…美潮のこと大事に大事に守っていく。幸せにするって約束する」
徹の言葉が胸に届く。大事にしてくれるの?
守ってくれるの?
幸せにしてくれるの?
この胸の中に収まって守られてみたい。私も徹と幸せになりたいよ………
「徹」
「ん?」
「ありがとう。私を幸せにして下さい」


