はぁ、はぁ、はぁ……


全力で走って息が切れた。

ここまで来れば渉も追ってこれないだろう。


なんだろう、さっきのキスは。
なんで渉が私に?

トボトボ歩きながら考えていた。
でも答えは出そうになかった。

はぁ、とため息をついたその時、
手首をギュッと掴まれた。


「見つけた!ふみの!」

「渉……」

「お前勝手にいなくなるなよ!
探しただろ!」

「だって!だって渉が……!
あんなことするから……」

「……。」

「なんであんなことしたの?」

「お前なぁ…、そういうこと聞くか?」

「だっ、だって、だってキスなんて…」



私が俯くと、渉に抱きしめられた。

「ちょ、渉!」

「お前、鈍すぎてやだ。」

「えっ?」
昨日新平にも鈍いって言われたな…。

「だから、好きってこと!」

えっ、えーーーーー⁉︎
渉が私を?好き?




「……今日言おうと思ってわざわざ映画のチケットとって、デートの約束したのに、昨日男にキスされたとか言うからお前が悪い。」


「な、タダ券あるって言ったの嘘だったの⁉︎」

「それくらいの嘘いいだろ、別に。」


意外だった。
めちゃくちゃモテる渉が私のためにそんな嘘までつくなんて。びっくり。

渉に抱きしめられたまま、聞いた。
「いつから…、その…、好きだったの?」

「同じクラスになってからだよ。
席近くなったじゃん?
あれ、実は友達に頼んでかわってもらった。ふみのと仲良くなりたくて。」

「そ、そうだったんだ。。
全然知らなかった。」

「お前以外のクラスの奴らは全員知ってるけどな。お前鈍すぎ。」

「えーーー⁉︎そうなの?」

「俺の態度見てりゃ分かるし。」



ぜ、全然分からなかった。。
新平の時といい、渉の時といい、
本当に私って鈍いんだ。。
何かショック。。




「ふみの?俺と付き合って?
昨日の男より絶対大事にするから。」

ギュ。
渉の腕に力が入る。


「し、渉。ち、ちょっと待って。。
私、ホント鈍くてごめん。
でも渉と付き合うとか考えたことなくて、ちょっと時間欲しいよ。。」


「そっか、そうだよな。
分かった。」

渉は納得してくれたみたいで、腕を緩めてくれた。

と、思ったら顔を持たれて上を向かされた。


「ちょ、渉!なん…!」


渉の顔が目の前に迫って、またキスされた。

顔を背けて抵抗しようとしたけど、
全然ダメだった。

それどころかキスはますます激しくなって、息も辛くなってきた。


「しょ…、ん…、や、やめ……。
はぁ、あ……ん…」


チュッ。音を立てて唇が離れた。


「ふみの、気持ち良かっただろ?」

「な、何言ってんの!バカ!」

「顔がめちゃエロかったもんな。」
いたずらっぽく笑う渉。

「その顔、他の誰かに見せたくない。
お前が昨日、その顔見せたかと思うと俺…。」


また強く抱きしめられた。

「ふみの、俺を選べよ。
俺以上にお前のこと好きな奴なんていないって、絶対。」

「渉…。」

腕を離した渉は、優しくキスをした。




昨日より、更に眠れなくなってしまった。