「凪早くー」やばっもうこんな時間「行ってきまーす」はぁセーフ遅刻寸前だった…。「もう凪ー新学期早々遅刻とかマジ勘弁」「ごめんごめん」そう‥私達は今年からこの橘高校に通う新入生。この高校は知らない方が珍しいくらい超有名な名門高校。私は合格ラインギリギリでなんとか入学できた。何故わざわざこんなお堅い学校に入学したのかというと私の幼なじみで親友の小山田紀香(おやまだのりか)       が通っているからだ。要するに紀香がいないと何も出来ない私にとって何が何でもこの高校に合格しないといけなかった。合格したとき私は嘘かと思った。だってこの私が超偏差値の高い名門私立高校に合格するとは誰も思っていなかったから心底嬉しかった。ついに教室の前まできた。だが足が震えて前に進めない。その時上からいや、だいぶ上から声がした。「邪魔。」低く落ち着きのある声だ。後ろを見ると──私はその人物を二度いや、三度見した。その理由は簡単だ。彼がヤンキーだったからだ。しかも超イケメンだった。この学校にいるのが疑問に思う。明るい赤に近い茶色のサラサラした髪の毛。細工のように細く美しいどこか冷たいものを感じる目。筋の通った高い鼻。血色の良い綺麗な唇。そして今まで見たことないようなきめ細やかな肌。私は見とれてしまった。「だ・か・ら」私は首を傾げた。だがヤンキーさんは顔色一つ変えずにこう言った。「邪魔だって」私は我に返った。「あ、す、すいません!」「別に‥‥いいよ。」あ‥またしくじった。いつもそう。大事なときにパニックになって結局相手を怒らせてしまう。テンション急降下。落ち込みながら席についたらさっきのヤンキーさんが近づいてきた。やばっまたなんかやらかしちゃったかな。またパニックだ。「…ん」聞き取れない。恐る恐る聞いてみた。「何でしょうか?」「だから…さっきは…ゴメン。」へ…今何て?私が理解出来ず一切動かないでいると、「だから、その…、さっきはごめん。」ぺこりと頭を下げている。え。ごめん…。エー!!「ヤンキーが謝ったー!!」はっっ言ってしまった。私は驚きのあまり大声で叫んでしまった。その後自分過ちに気づきはっっと口に手を当てた。言ってしまった…。ヤバい。汗がとまんない。ゆっくりヤンキーさんを見ると「プッッ」へ…。「ハハハハハハこいつおもしろすぎるー」笑ってらっしゃる…?彼はお腹を抱えて笑っていたのだ。私の頭は混乱状態。「あ、あの大丈夫でこざいましょうか?」ヤンキーさんはお腹を抱えるのをやめ笑いすぎて出た涙を綺麗な細長い指でさっと拭いてこっちを向いた。その顔が余りにも美しくて、私は見とれてしまった。でもすぐ我に返って「何故そんなに笑っているのでしょうか?」声が震えるのを必死に抑えて聞いてみた。するとヤンキーさんは口を開いた。「お前が可笑しいからに決まってんじゃん」あ、この人私が可笑しくて笑っていたのか。そんなことより私この人の名前聞いてなかった。「あの…遅くなりましたが名前は?」彼は微笑んだ。そして「ほんと聞くのが遅いな俺の名前は沖田綾翔。お前は?」緊張気味に答えた。「私の名前は真田凪です。よろしくです」普通に答えれたぁ。一安心。「ん、よろしく」その時「おーい綾翔早く行くぞ」友達らしき人がヤンキーさん。いいや、沖田くんを呼んでいる。沖田くんも気づいた様子で「お、じゃあまたな」またな…また会いたいって事かな。ヤバい顔が自然とにやけてしまう。ダメだ。私ちょっと話せたくらいで図に乗ってる。私は再び顔を引き締めて席についた。すると後ろから声がした。「ねえ、名前何ていうの?」私が振り向くとそこには──。わー可愛い。お人形さんみたいな顔立ち。クリッとした大きく丸い目に驚くほど長く綺麗なまつげ。小さいくてかわいい鼻。唇はピンク色であひる口。そして栗色のボブ。言葉には表せない程の美少女だ。何というか一言でいうとマスコットみたいなかわいさ。あ、そうだ名前聞かれてるんだ私。「私の名前は凪。真田凪です。」するとその娘はにこっと笑って「凪ちゃんって言うんだ。素敵な名前だね。」わー性格まで完璧だ。私は聞いてみた。「あなたの名前は?」するとその娘は「私の名前は長谷川愛美。よろしくね」そういって愛美ちゃんは手をさしのべてきた。私は慌てて手を出した。「よ、よろしくお願いします」すると「ふふ、凪ちゃんって面白いね。同い年なんだから敬語使わないでいいよ」あ、確かに私めっちゃ敬語使ってた。「ゴメンね。改めてよろしくね。愛美ちゃん」私は言葉を返すだけで必死だった。そしてチャイムがなった。教室にどうやら担任と見られる先生が入ってきた。どうやら担任の先生は普通のおじさんだ。でもとても優しそうで何でも相談に乗ってくれそうなお父さんみたいな先生。実は私の母は格好よく言えば未婚のシングルマザーってやつで生まれた時から父親がいない。だから父親って言う存在には強い憧れがある。そんなことを思いながら周りを見渡した。すると綾翔くんがいない。キョロキョロ頭を動かしていると先生に注意された。「おい、真田そんなに頭を動かしても金なんて落ちていないぞ」そう先生が言葉を発すると周りの皆が笑い始めた。わー入学早々注意浴びちゃった。多分今私の顔は真っ赤だ。恥ずかしいー!!そんな感じで入学初日は終わった。あっという間だったけど疲れたなぁ。誰もいない静まり返っている私の家。でももうそんなこと慣れっこだ。母が仕事から帰って来るのはいつも次の日になってからだ。そんな事を思いながら私はベッドにダイブした。その日はそのまま寝てしまった。