「ハルキくん、休憩時間大丈夫? ランチのスープ、サービスでつけておくね。冷めないうちにどうぞ」


 今の空気を敢えて読まずに、シンヤは声を掛けた。

 触らぬ神に祟りなしとは言うが、誰かがどこかで断ち切らなければ彼の周囲に漂う重い空気は無くならない。

 よろりと起き上がったハルキは、「いただきます」と小さく呟いて、まずカフェオレに口を付けてからナポリタンを食べ始めた。

 時間には抗えないからなのか、それともシンヤの人徳か。

 黙々と食べ進める彼を、まるで珍獣でも見るかのような目でシズルとアルゼフは見つめていた。


「ハル、ヒサギちゃんは今日何してんの?」


 地雷を踏むかと思いつつアルゼフが声を掛けるが、彼の思いとは裏腹にあっさり返事は返ってきた。


「今日? 夕方彼女に会うって言ってたよ」

「ふーん……て!? おい、今彼女って言った!?」

「言ったけど……アル知らなかったの?」

「知らなかったじゃねーよ。お前何でそんなにサラッと言えんだよ! 大好きなヒサギちゃんに彼女とか大問題じゃねぇかよ!!」

「確かに心中穏やかですとは言えないけど、ヒサギちゃんに彼女作らないでなんて言えないし、俺だって今は彼女いるから」

「なっ、かの……っ!? おい! どーゆーことだよ。お前ヒサギちゃんが大好きなんじゃねぇの? 彼女って何だよ! 二股か!? お前の8年どーなってんだよ!?」


 ぐいぐいと迫り来るアルゼフを押し返しながら、ハルキは一旦フォークを戻した。

 何気無く視線を上げると鋭く睨み付けるシズルと目が合ってしまい、ハルキは気まずそうに視線を泳がせるしかなかった。