「これ、また喧嘩?」
「……一方的に殴られた」
「彼女とデートじゃなかった? まさか、彼女に殴られたの!?」
「……違う。アイツの彼氏ってヤツが──」
そこまで言い掛けて、ヒサギの携帯が鳴り出した。
未だに二つ折りのガラケーを使用しているのは、機種変更の手続きが面倒なのもあるが、そういったものに無頓着なのが一番の理由だろう。
以前ハルキがスマートフォンに変えようと誘ったことがあったが、適当にはぐらかされてしまった。
液晶に表示された名前を見るなり、ヒサギの顔が怒りに歪む。
通話ボタンを押すが無言のままでいると、ハルキにまで聞こえるくらい大きな声が電波越しに響いた。
『──ちょっとヒサギくん! 聞いてるの!?』
「お前、知ってたのか?」
『何? 何のこと?』
「……知らないなら、いい。2度と連絡してくるな」
『えっ!? ちょっと、なによそれ!! ヒサギく……』
相手が喋り終わらないうちにホールドボタンを押したヒサギは、怒りに任せて携帯を真っ二つにへし折り投げ捨てた。
「ヒサギちゃんッ!?」
ハルキの声と耳慣れない音に、アルゼフとシズル、シンヤまでもがヒサギの方へと視線を送っている。


