不機嫌な君

…それから遅れる事20分。拷問のような昼食を済ませた葉月さんが戻ってきた。

「…ひとみちゃん、酷いわ」
「…葉月さん」
困惑顔で葉月さんを見上げる。

「みんなの視線は痛いし、・・・何より、無言で横で食べてる金崎部長が更にイタイ。
もう、拷問よ…次、また私を放っていったら、もう、ひとみちゃんとご飯食べてやんないから」

「エ?!そんな~。もうしません、しませんから、そんな事言わないでください」
「・・・ホント?」

「本当です。本当にしません、島谷ひとみここに誓います」
私の言葉に、葉月さんは溜息をついて笑った。

どの先輩も優しいけど、私は葉月さんが一番好きだから。

その想いをこめて、私は葉月さんの手をギュッと握りしめる。

「…女同士で気持ち悪い」
「?!」

その言葉に振り返ると、社食から戻ってきた金崎部長だった。
気持ち悪いとか失礼な。
反論したい気持ちを押し殺すように握る手に力が入る。

「そんな事でイチイチ腹立てないの。子供じゃないんだから」
「・・・でも」

「そうそう、今日、仕事終わったら圭ちゃんと一緒にご飯行こう。
それで一杯圭ちゃんに愚痴っちゃえ」

「エ?いいんですか?」
「当たり前でしょう?圭ちゃんは、ひとみちゃんの事妹みたいで可愛いって言ってくれてるんだから。
こっちがヤキモチ妬いちゃうくらいひとみちゃんの事可愛がってんのよ?愚痴位いくらだって聞いてくれるから」

圭ちゃん・・・松本圭介(36)葉月さんより年上で、スポーツ万能、硬派なイケメン。
…葉月さんの愛しの君…そう彼氏。

私も圭介さんを慕っている。本当に私を妹のように可愛がってくれてるから。
圭介さんはこの会社の営業部部長。

もうすぐ、結婚も控えてるラブラブな二人。
私にも、いつかこんな二人みたいな、素敵な恋人を作って、結婚したいな、なんて考える。

…今現在、恋人どころか、好きな人さえいない私には、夢のまた夢。