オムライスをジッと見つめる私。
それに気づいた金崎部長は怪訝な顔で私を見た。

「・・・何見てんだ?食べにくい」
「…オムライス、好きなんですか?」

「あ?・・・別に。社食のおばちゃんに勧められたから」
「…好きじゃないなら別のモノにしてください!オムライスが可哀相です!」

「…は??」
私の言葉に、ポカンとする金崎部長。

「ひとみちゃん!」
葉月さんは咄嗟に私を止めに入る。

その言葉にハッとし、金崎部長から視線を外すとオムライスを静かに頬張った。
…だって、この人の言葉に、なんだかイチイチ腹が立つんだもの。

自分でも、どうしていいかわからない。
抑えなきゃとは思うんだけど、口が勝手に・・・。

そんな複雑な私の気持ちを知ってか知らずか、金崎部長は不機嫌な顔のまま、オムライスを頬張った。

「…美味い」
その言葉に、私の目は一気に輝く。

「そうですよね?!美味しいですよね?ここのおばちゃんが作る料理本当に美味しいんですよ。
特にこのオムライスが、私は大好きなんです」

力説する私。
葉月さんはもう知らん顔で、から揚げ定食を無言で食べている。

「島谷って、真っ直ぐなバカだよな」
「なっ!また、バカって言った?!」
「ひとみちゃん!」

…もうこれでは堂々巡りだ。
せっかくのオムライスも全然美味しくない。・・・おばちゃんごめんなさい。

私、本当におばちゃんの作る料理、大好きなんです。

そう思いつつ、私はオムライスを急いで平らげると、席を立った。
「葉月さんすいません、私は先に戻ります」
「え?あ、ちょっと?…私一人にしない・・・で」

金崎部長と一緒じゃ、さぞ食べにくいだろう。
…すみません、葉月さん。でも今の私は、一秒だって金崎部長と同じ空間にいたくないんです。
葉月さんの痛い視線を感じながら、私は社食を後にした。