・・・初めての出会いが、これほど驚きで、最悪なものは初めてだった。
島谷ひとみ。俺にとっては、最低最悪の部下だった。

アメリカでは中間管理職。こっちで言えば、係長くらいの役職だった。
部下と言えば、言いたい事は言うが、ここまでひどい言い方の者はいなかった。

俺ですら、自分の言い方がそこまでは酷いと思った事はなかった。
自分の上司も部下も、俺の喋り方で怒った者はいなかった。

…英語と、日本語の違いか?

仕事初日からこれでは、先が思いやられる。
そんな矢先、友人の圭介に連れられて行った店で、またしてもひとみに出くわす。
隣にいる、圭介の婚約者ですら、俺を敵視している事は分かった。

帰ると言ってるのに、万年天然の圭介が俺を引き留め、4人での飲みになってしまい。
飲むだけ飲んで、サッサと帰るか、と思っていたのに。

突然差し出されたつまみが一杯盛られた小皿。
それを差し出したのがひとみで。困惑しつつもそれを食べた。

…言い方は気に入らないが、コイツはいつもバカ正直にものを言う。
・・・そして何より、何でもおいしそうに食事を食べる。笑顔が絶えない。
上下関係なんて、コイツにとってあってないようなもの。

イチイチ目くじら立てて怒るのもなんだと思いつつ、結局は怒ってしまっているが。

こんな変わった毎日を過ごしているうちに、ひとみへの気持ちに変化が現れた。
上下関係は気にしない。男女問わず仲がいい。

コイツにとっては、何でもない事だろうが、周りの男たちは、そうではないようだ。…俺もその一人だった。
その怒った顔を独り占めしたい・・・その笑顔を独り占めしたい。

そう思っても、ひとみは何も変わらない。
…気が付けば、彼女の気を引く為に、あらゆる手を使った。

俺が引けば、彼女は追い掛け、俺が追いかければ、彼女は逃げた。
ひとみが、どんどん俺に魅かれればいいと思った。

もう誰も、心に入れないくらい、俺だけで一杯にしたかった。

…それは、現実と化した。
…嬉しい事だが、一つ問題が起きた。

それは、俺の口から、好きだと言わせること。だった。