私達も驚いたけど、周りも驚いていた。
いくら誠意がこもっていなくても、いとも簡単に謝罪したからだ。

「…いいです、いいです。以後気をつけます。
ほら、島谷さんもデスクに戻ろう?な?」

そう言って私をデスクの方に押しやる先輩。
呆気にとられる私はされるがまま。

「…島谷と言ったな、お前は待て」
「・・・え?」

押しやっていた先輩の手が止まる。

「朝、出していた書類、これ、お前だろ?」
「・・・はい」

再び金崎部長のデスクに戻った私はそれを見て頷いた。

「人の心配してる暇がどこにある?」
「・・・」

「ふざけやがって。一人前に仕事が出来てから反論しろ」
「・・・すみません」

私が出した書類には、ビッシリと、赤の鉛筆で訂正箇所の指摘が。
…面目もない。

私はそれを受け取ると、肩を落として自分のデスクに戻る。

「…さっきはありがと、…島谷も頑張れ」
さっきの先輩が呟いた。

私は苦笑いしか出ない。
「…全く、止めたのに、止まらないから」

そう言った葉月さんは困ったように笑う。
「すみません、頭に血が上っちゃって・・・つい」
「でも…スカッとしたわよ」

「・・・え?」
「金崎部長は、誰がどう見ても御曹司だもの。反論なんかできない。
ひとみちゃんの勇士に感激しちゃった」

そう言って私の肩を叩くと、葉月さんは仕事に戻る。
…確かに、御曹司に堂々と反論した私は大物かもしれない。

…そう思うと、後の事が急に不安になってきた。
私…クビかも・・・と。