不機嫌な君

圭介さんの一歩後ろに、金崎右近が立っている。…相変わらず、不機嫌な顔で。

「会社のロビーで、懐かしい奴に会ってさ、無理やり連れて来たんだけど…なんだか浮かない顔だな、2人とも?」

訳がわからないと言った顔の圭介さん。

「…圭ちゃんの役立たず」
ムスッとした顔で葉月さんが呟いた。

当の圭介さんは、キョトンとしている。
私はそれを見て苦笑い。

「…やっぱり、帰るわ」
…雰囲気を察したのか、そう言い出したのは、金崎部長。

「おいおい、何言い出すんだよ?アメリカから帰って来たんだろ?久しぶりに飲もうぜ。…ダチの誘いを断る気か?」

相変わらず場の雰囲気が読めていない圭介さんが、金崎部長に詰め寄る。

「…こいつら、俺の部下なんだけど」
そう言って、私と葉月さんに目線を向けた。

「え?そうなの?それじゃあ、尚更仲を深めなきゃ」
そう言って微笑む圭介さん。
…もう、真っ直ぐ過ぎて、何も言えない。