冷たい空気の家。
入った瞬間感じた。
あまり生活感のない、少し暗い部屋。
リビングには、嶋田によく似た、
男の人の写真と、仏壇があった。
嶋田は泣いていた。
大きな背中。こんな暑いのに震えていた。
「……………………遥っ………………」
自分でもびっくりした。
気づいたら、大きな背中を抱きしめていた。
『遥』って呼んでた。
遥の話は、想像を超える、恐ろしく悲しいものだった。
遥には、誰も愛することができなくなってしまった。
………………一人ぼっちだったんだ。
仏壇には、女子が実習で作ったものと思われるカップケーキがたくさんあった。
「…………俺は甘いのあんまり好きじゃないけど、父さんは大好きだったから。」
「………………そっか。」