「お前のことだから、勉強のしすぎだろ。昼夜逆転するぞ」
「なによ、分かったような言い方しないで」
本当は、寝ないで勉強していた。
だって、みなとの大学にいくには、もっともっと勉強しなくてはいけない。
焦って、勉強していたら、時間なんか忘れていた。
っていうのもあるけど、今日みなとに会えることが楽しみで眠れなかったのもある。
「お前のことなら、全部知ってる」
鼻で笑って、見下されてムカついた。
そうよ、あなたは全部知ってる。
私の気持ちも。
勉強している理由も。
お見通しなんでしょ?
だけどね、
「高校生、なめないで」
勢いよくみなとの服を引き寄せて、唇を重ねた。
1,2,3秒
いや、0.5秒かな。
とても長く感じた、触れるだけのキス。
目の前で拍子抜けしたような表情で固まっている。
それが可笑しくて、「ふふ」と声に出して笑った。
我に返って、少し赤面をしたみなとは、片手で私の首に手を当てながら、ゆっくりと唇を親指でなぞった。
変な感覚に、思わずその手を掴む。
「馬鹿、んな顔してんじゃねー。その顔、他の誰かの前でするなよ」
その顔って、どの顔。
ぺちぺちと両手で軽く叩いてみる。
うん、意味がない。わからない。
